春になったと思ったら、いきなり夏日です。トライアルGP日本大会はちょっとしか暑くなくて、よかったよかった。

ラガの2勝目、藤波は4位

07チェコのラガ

 世界選手権チェコ大会は、ポーランド大会の1週間後、7月15日に開催された。

 ラガは今シーズン2度目(1度目は日本GP)の2ラップ目オールクリーンを達成、2007年チャンピオン候補のボウは、2ラップ目に5点をひとつとって、連勝記録更新をラガに阻まれることになった。
 藤波は2ラップ目にふたつの5点をとって失速、カベスタニーにふたたび表彰台を奪われている。
 5位以下ではファハルドが好調。ランキングもランプキンと入れ替わった。小川毅士は11位に入った。


 チェコ共和国のクラモリン。ネポムックに近い小さな町だ。古くからのトライアルファンにとっては、何度も世界選手権が開催されていたことで、この町の名を記憶している人も多いだろう。ポーランド大会のあと、1週間後世界選手権は、チェコのこの町にやってきた。ポーランドからは南に300km。クラモリンの会場は、モトクロスサーキットでもある。前回、ここで世界大会が開催されたのは1999年のことだった。
 お天気は晴れ。とても暑い。ほぼすべてのセクションは森の中にあって、ライダーにも観客にも、涼しい風を提供してくれたのは幸いだった。飛びつく岩は高かったが、難度的にはもう一つで、トップライダーには物足りない設定だった。路面も好天つづきで乾ききっていた。グリップは完璧。これで各クラスとも、1点を争う神経戦となった。

07チェコのカベスタニー
07チェコの藤波
07チェコのファハルド

今回は2位のボウはなしで、3位カベスタニー、4位藤波、5位ファハルド

 ユースクラスでは、初めてオールクリーンを達成したライダーが現れた。アメリカのパトリック・スメージだ。彼はこれが、二度目の勝利となるが、ヨーロッパのユース大会に3度出場して、そのうち2勝だから、あっぱれというしかない。
 ジュニアクラスでは、イギリスのアレックス・ウィグが勝利した。ウィグは年齢的な制限があって、まだ125ccに乗っている。フルサイズのマシンで戦うことが許されているジュニアクラスではハンディだが、ウィグはそのハンディをひっくり返して勝利している。
 この日の戦いは、とにかく神経戦だったから、熱くならずに試合を戦い抜いたものが勝利する。それはどのクラスも同じだった。
 ラガとボウは、ともに第5と第8で1点ずつ足つきをしたが、それが1ラップ目の減点のすべてだった。二人の極限のトップ争いが浮き彫りになった。この後ろに続くのは藤波貴久で、藤波は第6で2点と、第8と11で1点ずつを献上した。1ラップ目のトータルは4点だった。カベスタニーは1ラップ目4位。カベスタニーの減点は5点で、これは第6セクションでの減点。その他の14セクションは、彼はすべてクリーンしてきた。
 ランプキンには、運のない1日となった。減点16はファハルドにもダビルにも遅れをとった。
 そして2ラップ目、ラガとボウは、セクションがすべてクリーン可能であることを充分認識していた。そしてもしスコアが同じだった場合は、試合時間が短いほうが勝利をおさめる。そのためには、ライバルを差し置いてゴールに飛び込まなければならない。まずラガがペースアップをし、それにボウが着いていくかたちで、ふたりの“競走”が始まった。他のライバルは、二人のペースについていこうとしていない。
 しかし急いだことで、ミスも出た。ミスをしたのはボウだった。第7セクションで、ボウは岩から落ちて5点。これで、ボウの勝利は消えてなくなった。2ラップ目をオールクリーンしたのは、結局ラガだけとなった。
 トータル2点。ラガの、今シーズン2勝目だ。しかし、今シーズンの選手権の行方を見ると、ラガの巻き返しはいささか遅かった。残りはすでにたったの3戦しかない。二人のポイント差は17点。ラガが3連勝したとしても、ぼうは3位に入り続ければタイトルが確定してしまう。今年、この二人に割って入ったのは藤波だけで、それもたった1回なのだから、ラガの逆転劇はほぼ不可能に近い。
 ふたりのトップ争いに続いて、表彰台の一角はカベスタニーが獲得した。藤波は2ラップ目にふたつの5点を喫して、カベスタニーに逆転を許してしまった。チェコのオブザーバーの、ライバルに対するでたらめな採点を目撃してしまったり、逆に不本意な5点をとられたりして、この日の藤波はすっかり集中力を失ってしまったようだ。
 カベスタニーと藤波が順位を入れ替えた以外は、順位は1ラップ目のまま、推移した。

 さて、世界選手権に先駆けた土曜日、女性世界選手権の開幕戦が開催された。今年の女性世界選手権は3戦開催される。優勝は当然のようにライア・サンツで、減点は1。2位はドイツのイリス・クラマー(スコルパ)で減点2。3位はイギリスのベッキー・クック。世界選手権のランキング順に順位がついた。
 アメリカのルイーゼ・フォスレイは再びヨーロッパにやってきたが、彼女は練習時間が思うようにとれていなくて、15位に沈んだ。実力を出しきった結果ではない。

 最後に、再びパトリック・スメージについて。スメージが、かくもハイレベルな競技に参加するのは、今年が初めてだ。もちろんこのような大会でオールクリーンするのも初めて。わずか16歳のアメリカの若者が、高い集中力と強靱な心身を持ってヨーロッパのトライアルに挑んできた。ヨーロッパのトライアルには、大きな驚異であるにちがいない。

【トニー・ボウのコメント】
今日は、確実に勝っていた試合だった。でも、2位という結果は、世界選手権シーズンを見渡した場合は、悪くないものだと思う。今日の試合は難度が低すぎて、ちょっとしたミスも致命傷になるような設定だった。ぼくのミスは、2ラップ目のたったひとつだけだった。第7セクションで、ちょっと急いでトライしたのが原因だ。そしてその5点ひとつで、今日はもう取り返しがつかなかった。
【藤波貴久のコメント】
いくつかの失敗をしてしまった。それから、オブザーバーの厳しすぎる採点にも影響を受けてしまった。しかしこれが結果だ。これ以上言うことはない。
【ドギー・ランプキンのコメント】
いい感じをつかめず、ミスをたくさんしてしまった。それが悲惨なリザルトにつながった。次は母国での大会となるので、今回とは決定的にちがう大会としたい。


世界選手権
Pos. Rider Nation Machine Lap1 Lap2 Time Total Clean
1 アダム・ラガ SPA GasGas 2 0 0 2 28
2 トニー・ボウ SPA Montesa 2 5 0 7 27
3 アルベルト・カベスタニー SPA Sherco 5 3 0 8 26
4 藤波貴久 JPN Montesa 4 11 0 15 24
5 ジェロニ・ファハルド SPA Beta 7 10 0 17 25
6 ジェイムス・ダビル GBR Montesa 15 10 0 25 21
7 ドギー・ランプキン GBR Montesa 16 19 0 35 19
8 マルク・フレイシャ SPA Scorpa 21 20 0 41 14
9 クリストフ・ブルオン FRA Sherco4T 30 18 0 48 14
10 ダニエル・オリベラス SPA Sherco4T 31 23 0 54 13
11 小川毅士 JPN Montesa 29 32 0 61 11
12 ダニエル・ジベール SPA Montesa 39 27 0 66 11
13 フランチェスコ・イオリタ ITA Sherco 38 36 0 74 9
14 ダニエレ・マウリノ ITA Beta 41 34 0 75 11
15 ヘンリ・ヒマネン FIN Sherco 38 37 0 75 7
16 ジェローム・ベシュン FRA Beta 33 44 0 77 9
17 マルティン・クロウスティック CZE Beta 60 50 0 110 3

世界選手権ランキング

Pos. Rider Points
1 トニー・ボウ 174
2 アダム・ラガ 157
3 藤波貴久 129
4 アルベルト・カベスタニー 109
5 ドギー・ランプキン 108
6 ジェロニ・ファハルド 84
7 ジェイムス・ダビル 81
8 マルク・フレイシャ 78
9 ダニエル・オリベラス 47
10 クリストフ・ブルオン 36
11 ジェローム・ベシュン 27
12 ダニエレ・マウリノ 21
13 小川毅士 18
14 黒山健一 17
15 小川友幸 15
16 シャウン・モリス 13
17 ジョルディ・パスケット 12
18 ダニエル・ジベール 12
19 タデウス・ブラズシアク 11
20 野崎史高 10
21 渋谷勲 8
22 フランチェスコ・イオリタ 4
23 ミケーレ・オリッツィオ 3
24 チャビー・レオン 2
25 ヘンリ・ヒマネン 1

ワールドカップ・ジュニア
Pos. Rider Nation Machine Total Clean
1 アレックス・ウイグ GBR GasGas 4 26
2 マイケル・ブラウン GBR Beta 5 29
3 サム・ハスラム GBR Scorpa 9 21
4 アンドレア・バカラッティ ITA Montesa 11 20
5 マテオ・グラッタローラ ITA Sherco 13 25
6 ギュラーム・ラニエル FRA GasGas 17 19
7 ライア・サンツ SPA Montesa 21 17
8 エミル・ジレンハマル SWE GasGas 22 19
9 ニコラス・ゴンタール FRA GasGas 23 23
10 リー・サンプソン GBR Sherco 28 18
11 ヨッヘン・シェファー GER Montesa 30 18
12 リチャード・エルウッド GBR Sherco 32 15
13 マンドン・モイ NOR Beta 46 12
14 ルーカス・ペトラセク CZE Beta 65 6
15 ボイド・ウィルコックス AUS Beta 70 4
16 ミッチェル・ウィルコックス AUS Beta 88 0
17 エゥード・ラルケンス NED Montesa 93 3
18 リチャード・ロセンスタッター AUT GasGas 124 0
19 ハリー・ハーベイ GBR GasGas 124 0

ユース125選手権結果

Pos. Rider Nation Machine Total Clean
1 パトリック・スメイジ USA Sherco 0 30
2 ロス・ダンビー GBR GasGas 1 29
3 ダビド・ミラン SPA Sherco 2 28
4 アルフレッド・ゴメス SPA GasGas 2 28
5 アレクシ・セルバンテス FRA Sherco 3 28
6 ローレン・モレル FRA Beta 5 29
7 ポウ・ボテーラ SPA Sherco 13 25
8 アントニオ・アルフォンソ SPA GasGas 19 25
9 ベノ・ダニコート FRA Beta 19 21
10 ティブール・マルテル FRA GasGas 22 18
11 トーマス・タンベルグ NOR GasGas 22 15
12 ジェイク・ワイテーカー NZE GasGas 33 15
13 マルカス・エクハルド GER Beta 34 18
14 マリヤン・グリーベル GER Future 34 15
15 フレデリック・ラルセン NOR Sherco 39 15
16 ハコン・ペダーソン NOR Sherco 44 15
17 マルティン・ヘメル NOR GasGas 51 11
18 ヘンリク・クリステンセン SWE Sherco 55 12
19 リカルド・カタネロ ITA Future 55 9
20 マキシム・マシィ BEL GasGas 56 8
21 ジリ・フィケス CZE Sherco 63 8
22 イリス・クラマー GER Scorpa 81 5
23 レベッカ・クック GBR GasGas 86 5