春になったと思ったら、いきなり夏日です。トライアルGP日本大会はちょっとしか暑くなくて、よかったよかった。

黒山2連勝、小川が肉薄の全日本近畿大会

07猪名川の黒山

 新潟大会で復活ののろしを上げた黒山健一が、地元の猪名川近畿大会でも勝利。試合序盤には楽勝のペースに見えたが、終わってみれば小川友幸に2点差の辛勝となった。3位は野崎史高。渋谷勲が前戦に続き4位。田中太一が5位。
 国際A級は三谷英明が無欲の勝利。国際B級は大ベテランにして年に1回の全日本出場の和田弘行が優勝した。


■国際A級スーパークラス■
 兵庫県川辺郡の猪名川サーキットは、一本の沢を中心にセクションが設定されている。コースを含めて全日本の中でも体力的に過酷な一戦として定評がある。
 いつもは1点を争う神経戦となることが多い全日本だが、ここは5点をとりあいながら難セクションを攻略した者が勝利する、技術達者のライダーが好む設定。
 その猪名川らしさは第3セクションにして牙をむいた。小川と野崎が5点。第4セクションでは今度は小川と黒山が5点。さらに第5でも黒山は5点。第6では小川と野崎が5点と、5点がずらずらと並ぶ。
 もっとも第5セクションの黒山の5点は、大岩を前にしてキャブレターの不調でマシンが失速。トライできずに終わったものだった。すぐにチェックして、キャブにゴミがつまっていたのが発覚してその後に影響はなかったが、波乱含みの猪名川大会らしい一幕となった。小川の5点も、このセクションの最難所のポイントではなく、その手前の下りで転落するような転倒。「なにが起きたか、わからない」という。

07猪名川の小川
小川友幸

 田中太一は、1ラップ目には5点がひとつもなかった。それで、第7セクションまではトップを守った。しかし田中は、2週間前に激しい練習の結果、右手親指の靱帯を損傷していて、激しい痛みと戦っていた。ここのところ、不本意な成績が続いている田中は、結果的には今回も不本意な結果となってしまうのだが、自己のライディングには自信を取り戻せたようだ。
 新潟大会では黒山ひとりが独走。小川と野崎の2位争いという戦況だったが、今回は終盤まで団子状態で、黒山とて安心できる状況ではなかった。ただ、野崎にも小川にもミスがあって、これが今回完璧な調子ではなかった黒山を助けることになったようだ。
 黒山は言う。
「今回は6割くらいのライディングしかできなかった。新潟が最高に近いできだったから、今回は最悪です。ライディングが雑だった。キャブレターにゴミがつまったのは、1ラップ目のことだったし、それが影響することはありませんでした。最終ラップの最終セクションで登りそこねて5点になったけど、あれはきれいに失敗しました。5点になっても優勝は変わりませんけど、だから手を抜いたとかというわけじゃないです。時間がないのに一度下見に走りましたからね。5点になるつもりだったら、しんどい思いをして下見なんかしません。最後にいい思いをして勝ちたかったから、しっかりクリーンするつもりだったんです。今日は、第6セクションだけがクリーンできませんでした。クリーンは不可能じゃないんですが、落ちたらえらい目にあうので、リスクを避けて、足をついたということです」

07猪名川の野崎
野崎史高

 黒山が言う最終ラップの最終セクションについて、小川は苦笑まじりに「いやがらせですね」と言う。ただ、最終セクションにして2点差だったら、黒山ももっともっと真剣にトライに挑むだろうから、別の結果が出てきたにちがいない。
 小川のコメント。
「2戦続けて2位で、去年とは逆の展開ですね。去年はぼくが勝てなかったときに2位を守れなかった。でも2位じゃだめです。今日は勝ちそこねました。難セクションだったし、こういうむずかしい大会で勝ちたかったのに、残念です。今日の序盤は5点が多くてへこんでいました。ありえない点数だと思って。ところが情報を聞くと、トップとも大差ない。それで復活できました。でもその後もミスがあった。ミスがあって追い上げられる相手じゃないですから、これではいかんです。最初に5点になった第3セクションは、止まったらきっちりいけたかもしれませんが、このところ、攻めのライディングをしたほうがいい結果が出ていることが多いので、ノーストップでクリーンを狙いました。それが裏目でした。まだまだ、練習ではなんの問題もないところが、試合になるとうまくいかないということが多いです」
 3位になった野崎は、一見クリーンセクションのふかふかのヒルクライムの第8セクションで3回とも5点となったのが不本意の様子だ。野崎は、8月にお父さんになる。お父さん、がんばれ。
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■国際A級■

07近畿の三谷

 成田匠の3連勝ならず。さすがにこの難セクションは125ccでは苦しいかとも思われたが、しかし成田は、2ラップ目にはトップに立っている。苦しい戦いにはちがいないが、勝利が不可能ということではないようだ。
 勝利したのは、1ラップ目の4位から着実にポジションを上げてきた三谷英明。
「今日の走りはズタボロです。それでも勝てたというのは、たぶん、猪名川という地形が特殊で、ここは独特の滑り方をするじゃないですか。ぼくら関西の人間は猪名川の滑り方に慣れていて、調子は悪かったけど、他のライダーは、慣れていない分、ぼくよりもっと悪かったということだと思います。ぼく自身は5位か6位じゃないかなぁとそんな感じの走りだったんです。でもある意味、こういう勝利はうれしいですね。いつもほんのちょっとの差で勝利を逃しているから、たまにはこういうこともあるということで、もうけさせていただきました」
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■国際B級■

07猪名川の和田

 伏兵というか予定通りというか、和田弘行が去年に続いて優勝。和田は山本昌也の黄金時代に国際B級チャンピオンとなった怪童で、その後引退、最近になって、ちょっとだけトライアルに復帰している。その怪童ぶりはあいかわらずだ。
 いつもの戦いに目を移すと、ランキングトップの平田貴裕が1ラップ目に大量減点でポイント圏外につける。新潟で勝利の滝口輝は和田には届かないものの確実に2位をキープ。このままだとランキングでは平田と滝口が僅差となる状況となるのだが、ひかし平田が2ラップ目に復活。怒濤の追い上げで5位にまでポジションを上げてきた。これでランキングトップの座は安泰だ。
 1年に1回の和田の優勝のコメント
「疲れたわ。フラフラやったけど勝てたなぁ。年々、試合がしんどくなってくるわ。悲惨やね。2ラップ目にあんまり調子に乗れなくて、気分変えようと思って飯を食ったんよ。そしたら調子は取り戻したけど、今度は時間がなくなった。10セクションで大渋滞してたやろ。それでみんなに聞いたんや。ここをエスケープして、勝てるかなぁって。そしたらいけるんちゃうかというんで、10セクションはクリーンするはずだったけど、5点もらって先へ行った。クリーンしてても、最後にタイムオーバーくらうから、いっしょやね。3ラップ目は、真剣に下見もしたよ。歩くとな、足がつるんよ。しんどいわ。ほな、また来年な」
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