春になったと思ったら、いきなり夏日です。トライアルGP日本大会はちょっとしか暑くなくて、よかったよかった。

女子TDNはイギリスが2連覇

 9月29日、イギリスのマン島で開催された女子トライアル・デ・ナシオンは、イギリスが昨年に続いて2連勝を飾った。イギリスの対抗はドイツだったが、ダブルスコアに近い点差で、イギリスの圧勝という感じ。3位にフランス、4位にスペイン。これに加わるべき日本は、選手の辞退などによって今年の派遣は見送っている。


 イギリス女性は、女子世界選手権のトップにからむわけでもなく、これまでは少々小粒の印象が強かった。しかしここ数年、事態は少しずつ変化してきている。ライア・サンツとイリス・クラマーの大物女王の闘いに影に隠れているが、イギリスのレベッカ・クックの成長も著しい。これにドンナ・フォックスやマリア・コンウェイら、世界選手権でトップ10に入るメンバーが揃っているのだから、トータルでは最強チームとなるのもうなずける。さらにケティ・サンターなど、イギリスにはトップ15に入る女性は役者が揃っている。
 ドイツは、ロシータ・レオッタが成長株だ。おととしあたりから世界選手権に顔を出しはじめた3人目のイナ・ウィルデも実力を伸ばしているが、3人の安定感は、まだイギリスにはかなわない。1ラップ目イギリス11点に対してドイツは18点。ドイツが11点で追い上げれば、イギリスはたったの5点で逃げ切るというハイレベルな展開。数年前まで、女子TDNは世界のトップを走る女王様がお国のレディたちを率いて戦う図式だったが、今ではすっかりチームとしてのレベルの高さを競う大会になっている。
 日本と一騎討ちをして優勝を果たしたフランスチームは3位となった。悪くない結果かもしれないが、全員5点を示す10点のセクションもふたつあり、実力的にはやや落ちる。それでも選手の層が安定していて、かつレベルがそれなりに高いので、表彰台獲得にいたるわけだ。ライダーの力、チームの力を別々に考えると、ライダーの実力的には日本のほうが強く、チームの力は圧倒的にフランスが強い。日本が出ていれば、どうなっただろうか。
 世界チャンピオンになりそこねたライア・サンツのいるスペインは、4位にとどまった。トライアル王国スペインが、年を追うごとに弱くなっている。ナンバー2のカルラ・カルデラもすっかり伸び悩みで、ライアひとりが孤軍奮闘するチームとなっている。それでも1ラップ目はフランスを凌いで3位につけていたのだが、2ラップ目に失点を増やして4位に甘んじた。
 5位以下は、さらに点差が開いている。フランスやスペインとはダブルスコアに近い5位がノルウェー。かつては優勝争いをしていたトライアル強国だったが、今回は参加もたったふたり。メンバーが少なければハンディも大きい。5位、6位、7位と、いずれもふたりしかライダーをそろえられなかったチームが並ぶ。6位はアメリカ、7位はカナダ。
 8位はイタリア。こちらは3人揃っているが、それでも7位のカナダには25点の大差だから、女子ライダーを育成するのは、どこの国でもむずかしいのかもしれない。
 今年、日本は萩原真理子、西村亜弥、高橋摩耶の3人を代表選手と決めて、選手との遠征交渉をおこなったが、そこで選手から参加事態の提案がされて参加が見送られた。日本女子チームの参加は2002年ポルトガルから始まって、以来、毎年参加が続いていた。当初はベストメンバーとはほど遠かったが、それでも参加することには意義がある。あの時代があってこそ、その後の2位入賞がある。今年、代表候補が辞退をしたならば、出場希望を募るという可能性もあったはず。現実的には、少なくない遠征費の捻出や少しずつ高度になるTDNのセクションに対する走破性の問題など、誰でも参加できる状態ではないが、TDNは個人の戦いではなく日本チームが参戦する団体戦なのだから、個人の辞退=出場辞退というのは少しさびしい。表彰台がのぞめるかもしれないけど出ないかもしれないチームより、8位か9位かもしれないけど、毎年ちゃんと参加しているチームの方が、ヨーロッパでは愛される。今回最下位のオランダは、たった一人の参加である。ルールではTDNは2名以上の参加が条件になっているが、もうひとりの減点を常に5点として計上して、オランダは国として参加している記録を残している。そして2002年、日本と最下位を争ったポルトガルチームは、その後も確実に参加を続けていて、今年6年連続参加を果たしている。