春になったと思ったら、いきなり夏日です。トライアルGP日本大会はちょっとしか暑くなくて、よかったよかった。

シーズンオフのレプソルHondaから

開館25周年を迎え、現在2024年春のリニューアルオープンに向けて一時休館中のモビリティリゾートもてぎ(栃木県)のホンダコレクションホールを、藤波貴久がご案内というYoutube動画が発表されている。コレクションホール内をCota4RTで貴重なマシン群をじっくり観察しつつ、館内を縦横無尽に走り回っている。

コレクションホール内でレーシングマシンがエンジンを始動し、まして走り回るなんてたぶん初めてのことだと思われるも、トライアルと藤波貴久がいてこその快挙。次に行くときには藤波の残したブラックマークや柱のタイヤ痕を見てみたいと思ったが、リニューアルされちゃうからたぶん残されてないですね(しゃれを効かせて、どこかに残しておいてほしい気もする)。

さて、コレクションホールとは直接関係ないけど、レプソルHondaチームでは、年末に2本のインタビューを公開した。藤波貴久と、先日トニー・ボウとの契約更改に登場した桒田哲宏氏のお話。ざっと紹介しておきます。

藤波貴久(レプソルHondaチーム・トライアルチーム監督)

レプソルHondaチームのトライアルチーム監督、藤波貴久が、2つの世界タイトルと2つのランキング3位を達成した2023年シーズンを振り返る。

Q)トニー・ボウは常々レプソル・ホンダを「自分の家族」としますが、今回さらに4年間の契約更新をしました。 これにはどんな意味があるでしょう?

「トニーが加わった17年間、毎年2つずつタイトルを獲得して、トータルで34のタイトル獲得。これは本当に、完全なる称賛と尊敬に値します。 彼との契約は2024年までだったけれど、これを2027年まで延長しました。この契約延長が意味するところは、トニーが40歳にして40個目の世界タイトルを獲得する目標に向かうことを意味します。この目標はちょっと野心的かもしれませんが、ここまでトニーが達成してきた記録も、これまで誰も予想だにしていなかったことでした。なので不可能ではないと思っています」

Q)今年のトニーはこれまで同様に2つのタイトルを獲得して、トータルのタイトルを34としました。これまでのシーズンと比べて、なにかちがったことはあるでしょうか?

「今は、才能あふれるライダーが目白押しです。そんな中、 今シーズンは、ハイメ・ブストの運営態勢が大きく変わって、がぜん強力なライバルとして突出した存在になりました。トライアルGPの序盤戦では、トニーとハイメが勝ち負けをわけあって、とてもむずかしい戦況となりました。しかし日本大会の後、トニーはさらに集中を高めて連勝をもぎ取り、それが好機となりすべてがいい方向に向かいました」

Q)17年間、すべての価値をほしいままにしてきたトニーに、残されたやるべきことはあるのでしょうか?

「トニーに不足しているものはないと考えます。依然としてやる気と熱意を持っているし、技術面もさらに向上を続けています。ガブリエル・マルセリや他の若いライダーと比べれば、ベテランとなったトニーが新しい技を習得するスピードが遅くなっているのは明らかですが、とはいえ、ライバルに比べてレベルが落ちているわけではない。そこが、トニー本人も最重要視しているところです。今、トニーの最重要課題は、レースの疲れからどれくらい早く回復できるかとなっている。年齢面ではライバルと同条件とはいかないけれど、若さの代わりに豊富な経験が有利に働いてもいます」

Q)2023年、マルセリの成長についてはどう考えますか?

「Xトライアルシーズンの序盤にして、彼は自分のポテンシャルが高まっていることを示していました。開幕戦から2位に入って、それを証明していました。ただすべてが完調ではなく、足を負傷して1か月少しの間、ペースを落とすことになってしまった。それでも精神面も技術面も、明らかな進歩が見えていました。トライアルGPシーズンに入って、途中ペースを崩すことがありましたが、彼本来のペースを取り戻して、いい後半戦担ったと思います」

Q)Xトライアルのチャンピオン争いでは、マルセリが名乗りを上げてくるのではと思うのですが、やはりまだトニーの強さは圧倒的でしょうか?

「ガブリは、タイトルについて考えなければいけないと思います。彼はすべてのレースに対して勝利のモチベーションをもって臨む必要があると思います。そこがトニーとの差であると思いますが、ポテンシャルとして勝利を目指せるものは持っていますから、勝つことによってそれがさらに大きな自信につながっていくでしょう。まず最初の目標は勝利です。ランキング3位は良い結果ではなく、勝利を逃した結果です。自分は勝てる、タイトルを獲得できると信じきることが大切です。勝てば、すべてがうまくいくと思います。彼の進化は続いていますが、ただし過度に期待をかけたくもありません。それが彼のやり方だと思っています」

Q)2024年に向けて、マルセリにどんな改善を求めますか?

「技術的に、細かい部分でまだ足りないところがあります。インドア・アウトドアともにそのレベルはとても高いところに来ていると思いますが、アウトドアのトライアルGPでは、もう少し戦い方を微調整する必要があります。彼はとても慎重なスタイルをとるライダーですが、もっとダイナミックに、より速く走らないといけない。ガブリはすべてを自分のコントロール下に置きたいライダーですが、なにかを変えていく必要はあるかと思います。

Q)チーム監督しての2年目のシーズンをどう評価しますか?

「うれしいシーズンでした。昨年はすべてが初めてで、少しむずかしい面もありました。そのむずかしさに適応するために、アクションが遅くなったこともありました。今年はそんなことがなく、トニーとガブリ、ふたりの卓越した才能との時間を、もっと楽しむことができるようになりました。もちろん気分はいいし、気分が良ければ彼らにもっと寄り添えるようになりました。そして結果も非常によいものになりました。2023年は、誇り高い1年になりました」

Q)2024年、チームに何を期待しますか?

「チームの全員が同じ方向を向いて進んでいます。まるで家族のようなチームで、彼らと仕事ができてとても幸せです。2024年は、 少なくとも2023年と同じくらいの成果を目指します。 私はチーム全員の仕事っぷりに満足しているので、これまでと同じやり方で、自分たちを信じて進み続けてほしい。彼らへのお願いは、それですべてです」