春になったと思ったら、いきなり夏日です。トライアルGP日本大会はちょっとしか暑くなくて、よかったよかった。

シェフィールドはボウ。しかし

 1月8日、イギリス第5の都市シェフィールドで、毎年恒例のインドアトライアルが開催された。今年のシェフィールドは世界選手権からは外れているため、ジェロニ・ファハルド、アルベルト・カベスタニーは不参加。トニー・ボウが、圧倒的貫録を持って勝利を飾った。
 藤波貴久はアダム・ラガについで3位。しかし序盤のクォリファイラップで、盤石のパートナーであるジェセップ・バニャレスが負傷。ジョセップと藤波は、手痛い新年となってしまった。


 新年早々のシェフィールドは、イギリスでは伝統のイベントだ。昨年はインドアのノミネートライダーから外れたドギー・ランプキンが、地元のファンの前で大活躍したりもした。ドギーの出身地であるシルスデンは、シェフィールド近郊で、ドギーは地元スターなのだ。
 去年の暮れ、トライアル委員会では委員長などの改選が行われ、イギリスのデイビッド・ウイロビーがFIMトライアル委員長に就任した。そのウイロビーのお膝元であるシェフィールドがFIM世界選手権から外れているというのが、インドアトライアルとFIMの微妙な関係を示している。Xトライアル(インドア世界選手権は、今年からXトライアルと名を変えて開催される)は、主催も参加者も栄冠も、どれもスペイン勢が独り占めの状況だ。このシェフィールドでは、Xトライアルとは異なる、8人で予選、2人を振るい落とし、6人で決勝を戦うという独自ルールを採用してきた。
 世界選手権から外れたためもあって、アルベルト・カベスタニー(シェルコ)、ジェロニ・ファハルドといった有力ライダーが欠席した。ファハルドはこのシーズンオフにオッサとの契約を発表したが、いまだ公式の場には現れていない。ファハルドとオッサの実力が試されるのは、次のXトライアル、1月23日のマルセイユとなりそうだ。
 というわけで、参加者はイギリスのトライアル・スターが大勢を占めた。ドギー・ランプキン、ジェイムス・ダビル、マイケル・ブラウン、アレックス・ウイグ、ジャック・チャロナー。チャロナーは2010年ジュニアチャンピオンで、2011年は全戦Xトライアルに参戦する。注目の若手ライダーだ。そしてこのチャロナー以外のすべてのイギリス勢が、マシンをスイッチしての参戦となるのも注目だった。ランプキンはベータからガスガスへ、ダビルはガスガスからベータへ、ブラウンはシェルコからガスガスへ、ウイグはベータからシェルコへ。外国勢の3人、トニー・ボウ、アダム・ラガ、藤波貴久の3人は去年と変わらぬ体制だ。
 開始早々、ランプキンが失敗。ランプキンは、ガスガスに乗り換えてまだ何回しか練習のチャンスがなかったという。地元の大スターが敗退だ。しかしランプキンと同じくらいの減点をとって、ファイナル進出が危うかったのが藤波だった。結果的に、クォリファイでの点差は藤波とランプキンは、わずか1点だった。
 藤波は、クォリファイの最初のセクションで5点となっている。この5点が大事件だった。3mほどの障害物に登ったとたんにマシンがバックフリップ。マシンをつかもうとしたマインダーのジョセップは、その勢いに負けて3m下まで一気に墜落してしまった。これでなんと、ジョセップは手首骨折の重傷を負ってしまった。すぐ病院に運ばれ、藤波はボウのマインダーのディダックと組んで試合を続行することになる。しかしパートナーの大けがで心静かにいられるわけがない。その結果が、ファイナル通過ぎりぎりの6位という結果となってしまった。
 クォリファイは、ランプキンとウイグの二人が敗退して、しかしダビルが2位、チャロナーが4位とイギリス勢もなかなかの活躍ぶりだった。ラガが3位、ブラウンが5位、藤波が6位という順位だが、ただしファイナルの結果には、この順位は反映されない。
 そしてファイナル。ボウのうまさは圧倒的。新人チャロナーは新人らしい失敗を見せて37点を取ったが、対してボウはたったの2点。インドアでは、ボウのうまさの前にかなうライバルはいそうにない。
 2位にはラガで15点。藤波が気持ちを切り替えて挑んで21点で3位。このメンバーでは順当の結果ともいえるが、クォリファイでのアクシデントを乗り換えての3位は、藤波にとって、試練の2011年のスタートをなんとか乗り切ったという結果となったのではないだろうか。

 ジョセップは5週間安静ということで、インドアのシーズン中のサポートは無理。4月のアウトドアシーズンの開幕までに、復帰ができるかどうか、早い回復をお祈りしたい。

ファイナル
1 トニー・ボウ Toni Bou Montesa 2
2 アダム・ラガ Adam Raga GasGas 15
3 藤波貴久 Takahisa Fujinami Montesa 21
4 ジェイムス・ダビル James Dabill Beta 29
5 マイケル・ブラウン Michael Brown GasGas 30
6 ジャック・チャロナー Jack Challoner Beta 37
Qualifiers(予選)
1 トニー・ボウ スペイン モンテッサ 13
2 ジェイムス・ダビル イギリス ベータ 13
3 アダム・ラガ スペイン ガスガス 18,
4 ジャック・チャロナー イギリス ベータ 19
5 マイケル・ブラウン ガスガス 21
6 藤波貴久 モンテッサ 22
Eliminated(予選落ち)
7 ドギー・ランプキン イギリス ガスガス 23
8 アレックス・ウイグ イギリス シェルコ 30