春になったと思ったら、いきなり夏日です。トライアルGP日本大会はちょっとしか暑くなくて、よかったよかった。

小川友幸勝利! 全日本選手権開幕戦

小川友幸2007真壁

 全日本選手権シリーズ開幕戦。第1戦関東大会は3月11日、茨城県真壁トライアルランドで開催された。
 第1セクションをただひとりクリーンして幸先のよいスタートを切った小川友幸(ホンダ・チーム三谷)は、その後黒山健一(ヤマハ・黒山レーシングヤマハ)にトップを奪われるものの、1ラップ終盤で逆転し、そのままリードを広げて2007年開幕戦を勝利で飾った。
 黒山は肩の手術のリハビリ中で、無理が利かないうえに筋力が戻りきっておらず、高いステップからことごとく落ちるという苦しい戦いを見せた。
 2位は中盤崩れかけたものの、もちなおして黒山を追撃した野崎史高(ヤマハ・チームFUMITAKA&YSP京葉)。田中太一(ホンダ・HRCクラブぱわあくらふと&T)は4位、久々に全日本に姿を見せた渋谷勲(ベータ・WISE BETA RACING)は5位。
 国際A級優勝は小森文彦(ホンダ・HRCクラブ三谷)。ヤマハTYS125F(マシンのベースはスコルパSY125F)で参戦の成田匠(ハザードブレーカーズ)は4位。
 国際B級は昇格したばかりの14歳、藤巻耕太(ガスガス)が2位の平田貴裕(スコルパ)を10ポイントリードして勝利した。
●リザルトは
国際A級スーパークラス
国際A級クラス
国際B級クラス
エキシビジョン125クラス


 2006年、3連勝して初の全日本チャンピオンにまっしぐらに見えた小川は、しかしシーズン後半、勝ち続けなければいけないというプレッシャーから、半ば自ら勝利を手放していった感もあった。今シーズンはこのメンタル面の課題を克服することがメインテーマ。まずは早い段階でリードを奪うことが重要と試合前に語った小川だった。
 第1セクションで黒山、野崎が1点ずつ失う中(その他は井内将太郎が2点、ほかは全員5点)、ただひとりクリーンをとった小川は、第2セクションで5点となり、ここをクリーンした黒山に逆転を許した。いつもなら、これでがっかりして走りを乱していくパターンだが、今回はセクションもむずかしかったし、そこで乱れないだけの気持ちの集中ができていた。どこかで逆転ができるはずだと、人の走りに乱されることなく、自分自身の走りに取り組んだ。
 黒山がビッグステップを登りそこねて5点となった10セクション、小川は美しくクリーンして、逆転。この後、小川は一度もトップを譲ることなく、終盤には黒山に30点もの差をつけて勝利することとなった。
 特に登りきれずに滑り落ちたライダーの多い最終11セクションでは、持ち時間が残り少なくなっていた1ラップ目はエスケープしたものの、2ラップ目、3ラップ目は華麗なクリーンを見せた。ヒルクライムに向けて高い回転を維持しながらスタートしていくライバルとは対照的に、静かなスタートを切ると、そのまま低いエキゾーストノートをそのまま、路面に合わせて確実にグリップさせて、実にあっさりとクリーンをもぎ取ったのだった。

野崎史高
マインダーとの絶妙のコンビネーションも発揮
第7セクションの野崎史高

 2位は、黒山ではなく、野崎史高がもぎとった。野崎は1ラップ目終盤、クリーンしたと思ったらテープが切れてしまい5点というくやしい失点があった。そこからしばらくペースを崩してしまったものの、2ラップ目中盤から好調をつかみ、タイムオーバーなどのペナルティを含み、最後には黒山に10点差の2位となった。野崎本人は小川との20点以上の点差がくやしいようだが、負傷からはじまってマシンの乗り換えに苦労した2006年シーズンの印象は完全に払拭したようだ。
 黒山は、肩の脱臼癖は手術により解消しているが、体力の復活はまだ完璧ではない。特にハンドルを引く筋力がもとにもどっていないということで、力強くハンドルを引かなければいけないポイントでは、今回はことごとく失敗した。もちろんそれは技術的失敗ではないから、去年は味わったことがない3位という結果にも、本人はまったく落ち込んだ様子は見せていない(少なくとも、そのように見える)。小川が3ラップともに5点となった第2セクションでのクリーンなど、黒山健一のテクニックは健在というところを見せつけた(第2セクションは、黒山と野崎が1回ずつクリーンしている)。

黒山健一07真壁
復活戦の黒山健一

 田中太一、渋谷勲は、今回はいいところがなかった。太一はマシンセッティングが雨の真壁にはまったく不向きに仕上がっていたということで、グリップに苦労しながらセクションを走破していくことになった。渋谷は去年の中盤から全日本の舞台から離れていたが、2007年型ベータRev-3とともに復活してきた。しかし練習時間の不足が走りに現れていて、難しいポイントを攻略しきれていないという印象。しかしそれでも5位をキープするあたりは渋谷の潜在的実力の証明でもある。
 6位は引き続きガスガスを走らせる坂田匠太。去年と同様、ユースドのベータを持ち込んだ井内将太郎が7位。田中善弘(ガスガス)が8位となった。
 本来ならこの中に食い込んでくるであろう尾西和博(ホンダ・HRCクラブぱわあくらふと&T)は、試合直前に手首骨折の重傷を負っていて、ちょうど1週間前に手術を受けていた。走れる限り走ろうという決意で会場にやってきて、受け付けと車検をすませスタートしたところで主催者側から試合続行をあきらめるようにとの指示が出され、第1セクションを走った(もちろん5点)ところでリタイヤとなった。回復は、早くても4月末の新潟大会あたりとなるという。
●国際A級

小森文彦
小森文彦

 06年チャンピオン、小森文彦が勝利。小森は、メンタルの弱点をよく吐露する。そんな小森にとって、雨コンディションで結果的に難度の上がった今回のセクション設定は、比較的精神コントロールを必要としない、戦いやすい試合となったようだ。
 1ラップ目の小森はトップに3点差の3位だったが、1ラップのうちに5点がふたつ三つあってもおかしくない試合展開だから、3点差はなきに等しい。そして2ラップ目3ラップ目と、小森はのびのびとセクションを駆け抜け、減点を大幅に減らしてきた。後半の2ラップを通じて小森が喫した5点はたったひとつ。終わってみれば、2位に26点の大差での勝利だった。
 去年のチャンピオンにして開幕戦をぶっちぎりの勝利で飾った小森だが、しかし今シーズンの戦いをけっして楽観視してはいない。今回のセクションは雨のいたずらで難易度を増したものであり、今後は小森の苦手なメンタル勝負が続くと予想されるからだ。
 2位となったのは、あいかわらず練習不足で手足をつりながら苦しい戦いの渦中にいた三谷英明(ホンダ・HRCクラブ三谷)。3位は06年に1勝をあげた竹屋健二(ホンダ・HRCクラブ完投QCT明和TOPDOGS)。

成田匠
成田匠

 4位に入ったのが排気量アップをしない125Fで参戦するために国際A級に特別降格した成田匠。第1セクションで5点となるなど、前途多難が予想されたが、さすがに試合をまとめてきた。今回はセクション難易度が高かったから、4ストロークの125ccには苦しい戦いとなった。しかも成田のスタート順は、国際A級の先頭。小森とはざっと50分近い時間差を持ってのスタートとなった。次戦からは今回の成績を元にスタート順が決まるから、さらに上位に進出できる可能性を持っている。
 今回、1ラップ目のトップは野本佳章(ベータ・Moto Viento)、2位が柴田暁(ホンダ・HRCクラブ三谷)と意表をつく展開となった。だが野本はラップを重ねるごとに減点を増やして、終わってみればなんとかポイントを獲得する12位。柴田も減点を増やしたが、柴田は5位でゴールした。国際A級3年目。2007年は柴田の飛躍の年となるか。
●国際B級

藤巻耕太
藤巻耕太

 昨年のGC大会でぶっちぎり。2007年は昇格1年目にして関東選手権でも勝利して、勝利はまちがいないという下馬評とともに全日本選手権にステップアップしてきた藤巻耕太。マシンは唯一ガスガス125で、排気量のハンディを与えられながらも、これを乗りこなすことでより多くのテクニックを吸収しようという気持ちの現れ。250cc、あるいはそれ以上の排気量のライバルを尻目にしての勝利はさすがだった。藤巻も国際A級の成田同様、今回はB級の一桁ゼッケン勢に対し、30分ほど早いスタートを余儀なくされた。それでこの成績だから、次戦以降はより華麗な戦績も期待できそうだ。
 セクション個々を見れば250cc(あるいは270cc)だったらというシーンもあったが、セクションに果敢に挑戦して落ちていくところなど、むしろ今後の成長がうかがえるようで頼もしく思えたりもした。バランスや技術面ではだれしも太鼓判を押す藤巻の、今シーズンは楽しみだ。
 2位は、昨年チャンピオンの平田雅裕の弟、貴裕がつけた。ゼッケン6番が示す通り、昨年のうちからトップライダーに成長していたが、今年は兄弟連続チャンピオンのチャンスでもあったが、思わぬライバルの出現となった。
 3位栗田、4位村上、5位滝口、6位荒木と表彰台はバリエーションに富む顔ぶれとなった。栗田は若手のホープだった時代があるし、村上はA級昇格あと一歩でB級に踏みとどまっているベテラン。マシンを進めるのがうまいところがさすがにベテラン。滝口は藤巻と同世代だが、IBクラスを1年走って、5位は最上位。IBの2年目で、確実にIBトップライダーに成長してきた。6位の荒木は、32位の荒木隆介のお父さん。親子対決は、今回は親父の勝ち。同時に荒木は、去年の開幕戦の勝利者でもある。IBは、シーズン序盤はベテランが強く、終盤になると若手が腕を上げてくる。藤巻のリードではじまった07年のIBクラスは、どんなシーンを見せてくれるだろうか。
●エキシビジョン125
 今年から実験的に取り入れられた125ccマシンによる新設クラス。全日本格式ではないのでエキシビジョンとしての開催となる。参加資格は国際B級か国内A級の若手ライダーとなるが、国際B級にとってはわざわざエキシビジョンクラスにでる意義はないので昇格ポイントが与えられる国際B級クラスへの参加を望むことになる(事実、藤巻耕太は125ccで国際B級に出場した)。
 よって参加は、事実上国内A級で、早く全日本選手権のセクションを走ってみたいという模擬試験を受けるような感覚のライダーにターゲットが絞られることになる。今回は栃木の松岡一樹(ガスガス)が唯一参加した。減点は144点で国際B級の最下位と同点だった。周囲に同じ125ccマシンがいたり、同年代の選手が多かったりすれば、結果もちがったと思われるし、なにより吸収の早い若いうちに全日本選手権に参戦できるのは大きな意義がある。藤巻耕太も「去年このクラスがあれば大喜びで参戦していた(父親談)」と言っている。今回は寂しいクラスになってしまったが、今後には大いに期待したいところだ。このエキシビジョンは、九州大会でも併催が決まっている。


試合中の速報はこんな感じでした。
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エントリーリスト、スタート順、ゴール時間など、こちらもご参照ください。
全日本第1戦真壁情報